甘い誘惑を越えて

『あれから一年か……』




金曜日 22:20
少し汗ばむ陽気の中、アパレルショップから流れるクラブミュージックが鼓膜を揺らす。怒涛のクラナンノックから早一年。苦労した思い出ほど、追憶すると感慨深くなるものだ。



性欲を持て余す街 ミナミは、今日も盛大な賑わいを見せていた。人混みに紛れて案件を探すsagasui。咄嗟に、金髪ギャルを見付けてスッと方向転換した。さながらルンバのような軌跡を描いて、一直線に足を運ぶ。


ikasui「ちょっと、ナンパとかやめて下さい。マジ困るんで他の人あたってくれません？( ；´Д｀)」

ルンバ「それこっちのセリフやしww( * ´ 艸 ` )」






ikasui「いや、今急いでるんで。てか何？何が目的なん？(´･д･`｡)」

ルンバ「知らんわww(*ノд`*)」

ikasui「え？一緒に飲みに行きたいって？まあ悪い人じゃなさそうやし…行ってやるか(･∀･)」

ルンバ「行かんからww(´∀｀; )」


彼女は、元キャバ嬢のフリーター。このあと男と会う予定らしいが、どこか隙のある様子。壁際でビタ止めして連れ出し打診をした。


ikasui「俺も友達と待ち合わせしてるんやけど、早く来すぎたんよ。それまで軽く飲み行こ(ﾟωﾟ)」

ルンバ「いや、うちお酒飲めんし(´･ω･`)」

ikasui「ヤクルトなら飲めるやろ？10分だけ暇潰し付き合って( ^ω^)」


タイプだから等とは一切言わず、あくまでも暇潰しというスタンスで接した。了承を得たので、二人は近くのバーへと向かった。





ikasui「やっぱりナンパやったんやね。ほんまチャラいわー(´･д･`｡)」

ルンバ「…帰るよ？w(´ ω ` )」

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22:30
HUB心斎橋店に入店した。酒が飲めない二人はジュースを注文。バーカウンターで勃ち飲みを始めた。しかし、彼女は終始ケータイをいじっている。


ikasui「おまえさ、せっかく飲みに来たのにケータイばっかすんなや (..◝_◜..)」

ルンバ「あは、ごめんごめん、もうやめる(^_^;)」

ikasui「(..◜ᴗ◝..)」





声のトーンを変えて軽く叱ると、彼女は申し訳無さそうにケータイを置いた。女性は自分より格上の男性を好きになる。それを常に意識しながら信頼関係を構築していった。


スキンシップを取りつつ15分ほど話したところで店を後にした。


ikasui「まだ時間大丈夫やろ？もうちょい一緒におりたいから、あと一軒だけ付き合って(´ー｀*)」

ルンバ「友達の待ち合わせはいいん？(｡･ω･｡)」

ikasui「…てかさ、帰り御堂筋線よね？うち◯◯駅のすぐ近くやからうちで話そうよ( ^ω^)」

ルンバ「良いけど、絶対終電で帰るよ(｡･_･｡)」


チャリスイに二人乗りをしてikasui邸に向かった。

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23:10
地盤が沈下した家 ikasui大豪邸に到着した。



野菜ジュースイで乾杯して再度和み。


トリートメントルーティーンで背後から髪を触りつつ、甘えさせるルーティーンを使用した。


ikasui「ルンバって甘えるの好きそうやね(･ω･｡)」

ルンバ「別にー。どっちかというと甘えられる方が多いかな(´･д･`｡)」

ikasui「それは丁度良い。俺甘えるの好きなんよ(ﾟωﾟ)」


急遽、甘えるルーティーンに変更し、彼女を後ろから抱き締めた。





その流れでキス。終電まであまり時間が無いため、ルーティーン「ドラマチック・キス」で一気に雰囲気を盛り上げた。


ikasui「ルンバ…(｡ - `ω´-)」

ルンバ「……」

ikasui「急に女の顔になったやん。絶対びしょ濡れやろ(ﾟωﾟ)」

ルンバ「もー( *//｀ω´//)」

ikasui「ヤりたくなった？(･∀･)」

ルンバ「……うん(｡･_･｡)」





ikasui「でも今からヤッたら終電無くなるからやめとこ(・ω・)」

ルンバ「明日休みだから帰らんくても大丈夫だよ(｡･_･｡)」

ikasui「いや、今日は帰った方がいい。俺さ、会ったばっかの人とするのあんま好きじゃないねん(´ ω ` )」

ルンバ「……」





ikasuiの会ったばかりグダで、彼女はなんとも言えない表情を浮かべた。終電の時刻が迫っている。即をするなら彼女を家に泊めなければならない。ikasuiはそれが面倒だった。


ikasui「なっ。やから今日はやめとこ(´･ω･`)」





突然、彼女が濃厚なキスを仕掛けてきた。明らかに誘惑している。恋愛工学で言うところの「セックストリガー」を引いてしまったようだ。


しかし、ikasuiはもう彼女のことがどうでも良くなっていた。既に、口説くことには成功している。セックスをしたところで、ナンパの技術は上がらないし、彼女と生産性の無い時間を過ごすくらいなら、その時間を睡眠に充てる方が効率的だ。


そんな冷めた感情とは裏腹に、彼女はキスをしながらikasuiの股間に手を触れてきた。これが話題の「CT(チンタッチ)」か。


そんな手に乗るわけが……



ikasui「うわあああ‼︎＼(´ O ` )」








駄目だ！！
感情を抑えろ！
ここで即られる訳にはいかない。






股間を触る彼女の手を払い退け、ぎゅっと抱き締めた。


ikasui「俺はこうやってくっ付いとくだけで好きやで(`･ω･´)」






今までずっと心に引っかかっていたことがある。それは、セックスがしたくて即をするのではなく、即という事実を作るために即をしていたということだ。ナンパの技術を上げるため、ブログのネタにするため、自分に自信を付けるため……そのために、今まで即をしていた。


とりわけ最近に至っては、もう即の事実ですら必要性を感じなくなってしまっていた。もはや狂気の沙汰である。



気が付くと、時計の針は12時を指していた。


ikasui「もう時間やな。駅まで送るよ( ^ω^)」

ルンバ「……うん(｡-ω-｡)」


彼女も諦めたようだ。そそくさと家を出て駅へ向かうと、彼女の方から手を繋いできた。完全に追われる立場になったせいか、食い付きはかなり上がっていた。





ikasui「ありがとね。気を付けて帰るんやぞ( ^ω^)」

ルンバ「うん。またね！(´･ω･`)」


改札口で彼女を見送った。連絡先は交換していない。もう二度と会うことは無いだろう。ikasuiは溢れ出る寂しさを抑えつつ、夜道を歩いて帰宅した。





あーあ…






家連れ出し負け！